《1989》 がんが3つ重なることもある [がん]

女性芸能人のがん報道が続いています。
今度は、女優の仁科亜季子さんの大腸がんの報道です。

仁科さんは

  • 38歳で子宮頚がん
  • 46歳で胃がん

そして

  • 62歳で大腸がんの手術を受けて、抗がん剤治療もされた

とのこと。

3度のがん闘病の辛さを聞きながら、胸が痛みました。
仁科さんは私が高校生だった時、いちばん好きだった女優さんでした。

なぜ、3度もがんになるのか?
誰でもそう思うでしょう。

しかし2分の1の確率で起きるがんが3回重なることは
無茶苦茶珍しいとまでは言えず、私でもこれまで10人位は知っています。

2つのがんの事を重複がんと言います。
3つ重なると3重複がんと言います。

同時に2つの臓器に(たとえば胃と腸に)存在している時は、
同時性重複がんと言います。

胃がんを手術して、何年後かに大腸にまた別にがんができる場合は
異時性重複がんと言いますが、時々あります。

大腸がんは多発傾向があるため、4回できて4回とも手術して
大腸がほとんど無くなってしまった人もいました。

最初から分かっているならそうするのですが、4回して初めて分かるのです。
家族性大腸ポリポーシスという病気は、予防的に大腸を全摘することで有名。

さて、仁科さんの場合
子宮頚がんは、おそらくウイルスが原因
胃がんは、ピロリ菌が一つの要因かもしれない
そして大腸がんの原因は、いくつか考えられます。

最初は、高脂肪食など食事です。
次に、38歳時の手術時の放射線で大腸に炎症が起きた可能性があります。

いずれにせよ、3つのがんが、ほぼ独立して生じたのでしょう。
遺伝性のがんではなさそうです。

どうしてか。
それは、62歳の仁科さんが現在も生きている、からです。

遺伝性のがん(本物のがん家系)の人のがんは、50歳までに
発症して、命を奪われます。

仁科さんは今、元気に講演されているので、たまたまがんが重なっただけでしょう。

近藤誠医師の言葉を借りるならば、彼女は元気に生きておられるので
“本物のがん”ではなかった、ということになります。

では、3つとも“がんもどき”だったのでしょうか?
彼女は受ける必要のない無駄な手術や抗がん剤や放射線を受けたということ?

3つの手術は無駄なもの?
意味の無いがん治療を3度も受けたのか?

そんなはずはない。

近藤誠理論の間違いは、なんとなくでも、みんさんにお分かりいただけるのでは。
難しい理屈はともかく、直感で「オカシイ!」と思う人が多いことでしょう。

実は5年前、私は仁科さんとお話をして、一緒に写真を撮っています。

http://blog.drnagao.com/2010/05/post-677.html

このアピタルに書き始めて3カ月ほど経った頃の彼女とのツーショット写真。

あれから5年半。
仁科さんは、3番目のがんとお付き合い。

そんなこともあり、複雑な想いで彼女の会見を聞いていました。
しかし辛い経験をされた仁科さんだからこそ、大丈夫だと確信しています。

参考文献) 「長尾先生、近藤誠理論のどこが間違っているのですか?」(ブックマン社)