《1995》 カリフォルニア州で「安楽死法」が成立 [平穏死]

アメリカ・カリフォルニア州議会で「安楽死法」が可決され
州知事が署名し、成立しました。

http://www.cnn.co.jp/usa/35071507.html

死ぬ権利を認めた法律(州法)は、全米で5番目になります。
1年前のブリタニーさん(享年29歳)の安楽死が影響しました。

彼女は、安楽死が許されていなかったカリフォルニア州から、許されているオレゴン州に
引っ越しをした後に、予告どおり医師から処方された自殺薬を服用して亡くなったのです。

日本の多くのメデイアは、彼女の死を「尊厳死」と誤報しました。
正確には「安楽死」ないし「医師による自殺幇助」ですが、間違えていました。

なぜ、多くのメデイアが誤報したのか。

そもそも、安楽死と尊厳死は同じなのか、違うのか?
違うとしたら、どこがどう違うのか?

医師の中にも、よく「私は安楽死や尊厳死には反対だ」という人がいます。
その人は、2つの言葉を同じだと思い、そう使っているのでしょう。

安楽死と尊厳死は、違うものです。
言葉はやはり区別しておかないと、議論が混乱します。

「尊厳死には反対だが、安楽死には賛成」とか
「尊厳死には賛成だが、安楽死には反対」という若者もいました。

医者がよく分からない言葉を、若者が分かるのは、難しいことかもしれません。
しかしそんなテーマで若者と議論してみたら、とても面白いことになりました。

その様子は、「長尾和宏の死の授業」(ブックマン社)に収録されています。
学問的な議論ではなく予備知識無しで若者と語りあった時間は新鮮でした。

私なりに言えることは、

  • 欧米は、安楽死の議論をしている
  • 日本は、尊厳死の議論をしている。

欧米と日本では、次元が違う話ですから、混同しないで下さいね。
別々の議論です。

ちなみに日本では「尊厳死法案」という言葉も存在しません。
「終末期の医療における患者の意思を尊重する法律案」です。

私は一般財団法人・日本尊厳死協会の副理事長として、そのような議論に
参加してきましたが、この1年以上、国会での終末期の議論はありません。

「尊厳死」は、「自然死」や「平穏死」と同義と考えて下さい。
しかしよく安楽死と混同されるので、平穏死という言葉で本を書いています。

私は、尊厳死、平穏死、自然死には賛成ですが、
安楽死、自殺には、一貫して反対してきました。

多くの市民が「平穏死」という言葉を知ることになりましたが、今度は
病院の医師や看護師が、その希望をどう受け止めたらいいか分からない、
という声が寄せられるようになったので、医療者向けの本も書きました。

 「高齢者の望む平穏死を支える医療と看護」(メディカ出版)

議論の次元や種類は違えど、生命倫理に関する議論は先進国の宿命でしょう。
日本は日本なりに、終末期の問題をしっかりと見ないといけないと思います。