《1505》 薬が大好きな日本人 [未分類]

最近、ボケ防止のため(?)にいろんな数字を覚えようと
少しだけ努力しています。
なんの成果も上がっていないようですが。

研修医君が来ても、数字ばかり聞いています。

  • 年間死亡者数は増えている?減っている?
  • それはどれくらいの数?
  • 日本国の医療費は?
  • じゃあ、介護費は?
  • 在宅で死ぬ人の割合は?
  • 尼崎市の人口は?
  • 医者の数は?看護師さんの数は?
  • 100歳以上の長寿者数は?
  • 認知症の人の数は?

以上の質問に、一問でも正解した研修医君は
残念ながらまだ一人もいません。
だから研修期間中に、ひとつでも数字を覚えてもらいます。

さて日本の医療費は少し前までは30兆円と教えていました。
パチンコが30兆円で葬式産業は15兆円だと、偉い先生の
受け売りで説教していたのが10年ほど前です。

そしてこの3年位は、医療費は36兆円と説明していました。
しかし高齢者は増える一方なので、医療費も増える一方で
ついに40兆円、という日が近いそうです。

では、そのうち何割位が薬代なのでしょうか?

答えは、2割だそうです。
お薬自体のお金と薬局の手数料なども含まれています。
要するに、お薬は8兆円産業ということができそうです。

8兆円と言っても、さっぱり実感がありません。
ちなみに消費税1%が、2兆円相当らしいので
4%分くらいなのでしょうか。

あまりに大雑把な言い方ですが、今回の消費税増税分が
日本人のお薬代相当だと考えればいいのでしょうか。
高いのか安いのか、まだ分りませんが。

さて先日も書いたように外来受診者は、どんどん減っています。
いろんな要因が重なっているのでしょうが、最大の原因は、
人間ドック学会の生活習慣病の新基準かもしれません。

「血圧、血糖、コレステロールは高いほどいい!」
なんて文字が電車の広告に連日、並んでいますから、
「これくらい大丈夫!」と医者通いを中断する人が増えている。

なぜそんなことが分かるのか?
それは、いろんな会社の産業医をしているからです。
健康診断で異常を指摘された社員の相談時に告白されます。

受診しなければ、お薬も出ませんし薬代はゼロになります。
医療費の増加に頭を悩ませている国には喜ばしいことです。
困るのは、お医者さんと製薬会社と薬剤師さんです。

では、はたして患者さんはどうなのか?

医者は必ずこう言います。
「病気が重症化して、結果的に医療費も増えてしまう。
 だから無症状の段階でも薬を飲まないといけない」と。

それが本当なのか結果が出るまでは相当時間がかかります。
もちろん人によっては受診中断でも影響無しということも。
しかし人によっては大変にことになる人も出るでしょうが。

私は、10年後の日本人のお薬をいろいろ想像します。

今より、薬代は増えているのか?
それとも、減っているのか?

  • 高齢者の増加=病気の増加
  • 患者の受診抑制=薬剤費の減少

の綱引きになるような気がします。

人間ドック学会の設定値への各医学会の反論が
始まっています。
私自身は今回の発表は政治的意図であると見ています。

当院の場合は、在宅患者さんは増加の一途です。
1階が外来で、2階が在宅患者さん向けのオフィスなのですが、
「いつか1階と2階を入れ替だね」なんて冗談も。

いずれにせよ、「薬好きな日本人」と言われるのも
あと何年間だけなのかもしれませんね。

平等に医療が受けられない社会が来るかもしれない、
という意味も含めての勝手な予想、ということです。