《1510》 多い割に知られていない「シェーグレン」 [未分類]

「口が渇く」と来院された方に血液検査をすると、
抗SS-A抗体は果たして「陽性」でした。
やはり、シェ―グレン症候群のようです。

シェ―グレン症候群の人は、6~7万人いるそうです。
しかしそれはあくまで診断が確定している人の数字です。
まだ診断されていない人は50~100万人と言われています。

これは凄い数字。
海外では、関節リウマチ患者数と同数と言われていますが、
日本ではリウマチの方の10分の1程度と言われています。

シェ―グレン症候群は、膠原病(こうげんびょう)の範疇に入ります。
膠原病で一番多い病気は、関節リウマチです。
シェ―グレンにリウマチを合併する人は珍しくありません。

男女比は、1:17と、圧倒的に女性に多い病気です。
当院でのシェ―グレン症候群の男性はたった1人だけです。
「女性の口渇」を診たら、シェ―グレンかな? と思います。

シェ―グレンは、涙が出なくなる病気でもあります。
問診で「目が乾くか?」ということも必ず聞きます。
「ドライマウスのドライアイ」とくれば、ピンときます。

シェーグレンは、口と眼の症状だけならまだましです。
病状が進むと手足の関節炎や間質性肺炎を合併してきます。
そうなると全身病として診ていく必要があります。

確定診断は、唾液腺を生検して組織検査になります。
そのためには、耳鼻科を紹介しなければなりません。
それを嫌がったり高齢であれば内科で診ることになります。

シェ―グレンの治療薬として塩酸ピロカルピンがあります。
これは、つばを出すお薬で、町医者でも使います。
しかし汗をかくという副作用もあり、用量調節が必要です。

漢方薬の麦門冬湯を使うこともあります。
あるいは人工唾液や人工涙液も使います。
QOL(生活の質)を上げることを治療の目標にします。

肝炎や腎炎を併発すれば、命に関わることもありますが、
そのような気配があれば、膠原病科に紹介します。
生物学的製剤という特殊なお薬が必要な方もいるからです。

この病気は、口腔外科、耳鼻科、眼科、膠原病科、内科など
いろいろな診療科が協力して診る場合もあり得る病気です。
推定患者数からいっても、一般的な病気だと言えます。

しかしその割には、あまり知られていない病気です。
あるいは、診断がつくまで時間がかかることがあります。
「口が渇く」=糖尿病、だけではありません。

糖尿病で口が渇くという症状が出るのは血糖が500mg/dl以上。
相当重症な糖尿病でないと、そのような症状は出ません。
もしその人が女性であればまずシェ―グレンを疑ってください。