《1515》 減らない胃ろうの後悔 [未分類]

生かされなかったリビングウイルの2例目は、
施設に入所中だった高齢の親に胃ろうをつけて
しまったという子供さんの後悔でした。

胃ろうを巡る相談が、毎日のようにあります。
ですから特段珍しい話ではありません。
リビングウイル(LW)を持っていたなら珍しいが。

私は胃ろうに反対しているわけではありません。
胃ろうは、もっとも優れた人工栄養の道具です。
やる限りは「ハッピーな胃ろう」を目指して欲しい。

「ハッピー」とは、口から食べられること、一点です。
全体の1割でも2割でもいいから、食べることを諦めない。
口から半分で、足りない半分が胃ろうからならかなりいい。

一番いいのは、胃ろうを卒業して全量摂取に戻ること。
そんな人はいくらでもいるのですがあまり知られていない。
胃ろうをやる限りは、「ハッピー」を目指して欲しいのです。

  • 胃ろう = 一生食べたらダメ
  • 胃ろう = 食べたら誤嚥性肺炎を起こす
  • 胃ろう = 一生モノで外せない

以上は、すべて誤解です。

胃ろうをつけていても、いくらも口から食べられるし、
誤嚥性肺炎は、胃ろうがあっても無くても起こります。
当たり前のことが医療者にもあまり知られていません。

ただし、胃ろうでしか生きられない場合があります。

  • 先天性食道閉鎖症などの子供の病気
  • ALS(筋委縮性側索硬化症)などの神経難病
  • 嚥下に関わる部分が特にやられる脳梗塞やその急性期

以上の病態では、口から食べられない場合もあります。
しかし質問にあった認知症や老衰における胃ろうは食べられます。
食べられるのに食べさせないのが現代医療、だと以前書きました。

ですから胃ろうをつけること自体が問題だとは思いません。
様々な理由で救命のために胃ろうをつけることが時々あります。
私は「その後の経過」こそが問題だと思って、聞いていました。

つまり、

  • 食べられる可能性を諦めない事
  • 嚥下評価や嚥下リハビリをすること
  • それでも食べられなくなり、意思疎通ができなくなった時にどうするか

などが、このケースの問題だと思いました。

やはりつきつめると、医師とのコミュニケーションなのです。
昨日の救急搬送後の人工呼吸器の問題もそうですが、
経過の中で医師との話合いが不可欠ですが、それが欠けていた?

特に経過が思わしくない時です。
もはや治る可能性がなく、終わりが近いと判断された時に
しかも本人がLWを持っていたら、堂々と撤退してもいいはず。

しかし現実には、訴訟を恐れて撤退をしない医療者が多い。
LWに何らかの法的担保があればその方の希望が叶うでしょう。
「こんなはずじゃ無かった」という家族の後悔も減るでしょう。

そんな発言をしました。