胃ろうから栄養を入れているが、口から食べてもいいか?
そのような質問を、よく頂戴します。
もちろん「全然問題ない」のですが。
食べたらダメと言われていますが実際は食べていますが?
この質問も、よく頂戴します。
いいも悪いも、もう食べているんだからそれでいいでしょうに。
胃ろうをしている=口から食べてはいけない。
これは完全な誤り、間違った刷り込み、です。
しかし若い医師や看護師は、みなそう信じています。
なぜか?
それは、やはり訴訟恐怖です。
実際に食べさせて、訴えられて裁判で負けているのです。
司法の判断は「誤嚥リスクのある人は食べさせてはダメ」です。
医療や介護の現場は、司法の判断に大きく左右されます。
訴えられたら仕事ができなくなる。
医者を辞めないといけなくなる。
そんなリスクぐらい負え、というマスコミが多くいますが、
それは当事者でないからで、単なる野次馬の戯言です。
現場が萎縮するには、それなりの理由があるのです。
認知症の方がJRの線路内に入った事故に対する名古屋地裁、
名古屋高裁の判決では、家族に賠償責任が命じられました。
それに従うと、認知症の人は閉じ込めておけ、となります。
脱線しました。
以上のような理由から
「公式には食べてはいけないが、実際はパクパク食べている」
という奇妙な現象があちこちでおきています。
実際、私が診ている中にも、病院側は完全胃ろう栄養である
ということになっている患者さんがおられます。
1日に何回かのインスリン注射も家族に命じられています。
しかし実際には、その患者さんは口からパクパク食べています。
ドアの隙間から覗き見ると、朝からビールもグイグイ飲んでいる。
しかし通院している病院では「胃ろう栄養患者」さんなのです。
「そんな馬鹿げたことがあるのか!」と言う人がいます。
しかしそんな奇妙な現象を生みだした原因は、実は
マスコミや司法にある、と私は思います。
あるいは、それを容認している市民にあるのです。
私自身の持論は「生きるとは食べること」
「誤嚥と誤嚥性肺炎は違うもの」
「誤嚥性肺炎は治るものは治るし、治らないものは治らない」。
それを実行しているのは、「覚悟」があるからです。
医者を辞める覚悟、牢屋に入る覚悟、です。
そんな覚悟を多くの医者や施設長に求めるのは無理だと思います。