《1537》 「アンハッピーな胃ろう」とは? (Q&Aその10) [未分類]

「アンハッピーな胃ろうとはどんな胃ろう?」
これもよく聞かれる質問です。

まず誰がアンハッピーなのかです。
もちろん本人でしょう。
しかし家族だけがアンハッピーな場合もあります。

私が「アンハッピーな胃ろうだなあ」と思うのは
以下の2つの場合です。
あくまで、老衰や認知症の方への胃ろうの話です。

  1. 食べられるのに食べさせてもらえない胃ろう患者さん
  2. リビングウイルを持ちながらも、意思疎通ができないか
    自分の唾液さえも誤嚥する状態での胃ろうの継続

(1)はすでに何度も書いたとおり。
口腔ケアと嚥下リハをしっかりやり、口から食べることを
多職種で、あるいは地域で支援することが何より大切です。

(2)は大変難しい問題。
もし自分がそうなった場合は「人工栄養を中止してね」との
お願いを文章で示していても実際には中止することは難しい。

日本老年医学会のガイドラインでは「撤退も選択肢」という見解
が示されていて、実際に中止の経験のある医師も少なくないとか。
しかし現実には中止できない場合がまだまだ多いように感じます。

病院では訴訟恐怖があり、中止なんてとんでもないという意見も。
多くの医学会において、いろいろな議論がされている最中です。
しかしこれは到底、医師だけで決められる問題ではありません。

悩ましいのは、「ハッピーな胃ろう」もいつかは多くが
「アンハッピーな胃ろう」になっていく可能性があることです。
そして、多くの患者さんがリビングウイルを持っていないことです。