《1540》 「胃ろうをしなければ餓死」と言われた時 (Q&Aその13) [未分類]

病院で胃ろうを勧められた認知症のAさんのご家族は、
主治医からこんなことを言われたそうです。
「胃ろうをしないと、餓死しますよ!」と。

「餓死???」

家族の頭の中を「餓死」という2文字がグルグル回り続けました。
「そうか、胃ろうをしないと親を餓死させてしまうのか……」
さんざん悩んだあげく、やはり胃ろう造設をお願いしたそうです。

日本人は「餓死」という言葉に弱い。
これだけ豊かな日本で「親を餓死させたら」どんなことになるか。
100人いたら、100人とも必ずそう考えます。

実は主治医もそれを計算の上、そんな説明をすることがあります。
様々な理由で胃ろうを造って、次の施設や在宅に帰したい場合に、
あれこれ説明するよりこの「殺し文句」を使った方が早い場合も。

本来は「誤嚥性肺炎を繰り返すので将来を見越して早めに胃ろうを」
これなら私も理解できます。
しかし説明するには時間がかかるので、「餓死」という言葉を使う。

さて、困ったことに、その患者さんが実際に家に帰ってきたら、
何事も無かったかのようにパクパク食べられる場合がよくあります。
一方で「餓死」と言われ、一方で「食べられるので胃ろう注入不要」と。

家族は混乱します。
餓死……?
誤嚥性肺炎……??

「食べられるのに食べさせない」状態と
「餓死」は全然違うものだと思います。

餓死とは、食べたくても食べるものが無い場合のことだと思います。
「食べさせない」ことと「餓死」は区別したほうがいいと思います。

もし、主治医に「餓死しますよ」と言われたら、
「本当に食べられないのか?」をよく聞いてみてください。

耳鼻科や歯科の医師に嚥下内視鏡(VE)をしてもらうなど
しっかり嚥下評価を受けてください。
そこに立ち戻り、よく考え、よく話し合うべきだと思います。

以上は、認知症や老衰での話です。