《1542》 胃ろうは減ったが…… [未分類]

胃ろう=悪、と世間の人に誤って刷り込まれたようです。
昨年は、胃ろうの新規造設患者数は明確に減りました。
その代わり、鼻からチューブと高カロリー点滴が大流行。

消化器病専門医、消化器内視鏡専門医としては大変残念。
胃ろうの短所ばかりが強調されて長所が隠れてしまった。
そして欠点の多い方法の方が優れていると、誤解された。

そして、わざわざ損な方法を希望するご家族が増えた。
情報を正しくお伝えすることは本当に難しいことです。
どれだけ講演しても本を書いても、ほとんど伝わりません。

餓死、誤嚥性肺炎というキーワードで胃ろうが造られ、
口腔ケア、嚥下リハというキーワードで食支援がなされる。
そして再び食べられて元気になった! のならいいのですが……。

鼻からチューブないし高カロリー点滴と輸液ポンプのまま
自宅に帰る人が増えています。
病院も家族も自宅でそのままできると思っている人が多い。

しかし実際はそうではなく、在宅管理は大変です。
胃ろうに比べて何倍ものリスクを負うことにもなります。
しかし内心は嫌でも在宅主治医を受けることがあります。

それはそんな重装備の患者さんを受ける在宅医がいないから。
誰も引き受けないならば、やりましょうと受けることがある。
本当は「胃ろうでないと受けない」と言いたいところを我慢。

なんとも言えない無力感を感じます。
薬局は、高カロリー点滴は大歓迎です。
特殊な準備のため薬剤師が訪問する機会も増えるから。

かつてはおそらく1000人以上、高カロリー輸液ルートを
作成したので、とっても馴染みのある栄養法なのですが、
今ではあまり好きでなくなりました。

やはり胃ろうの方が格段に優れているから。
胃ろうの造設が可能なら、胃ろうでしょう。
ただし、自分自身にやろうとは思いませんが……。(続く)