《1552》 漢方と在宅医療は相性がいい [未分類]

昨夜は大宮市で医師に「漢方と在宅医療」という講演をしました。
こんなテーマでお話しすることが、1年に1回くらいあります。
このテーマで話をする医師は日本中で私だけだそうです。

日本医学は、1000年以上、漢方でした。
しかし、江戸末期まで漢方という名前はありませんでした。
なぜなら、日本の医療には漢方しか無かったからです。

ところが、ドイツ医学が出島からオランダ語で入ってきました。
「蘭方」と呼ばれるようになったので、それに対して
「漢方」と呼ばれるようになっただけです。

明治7年、国は蘭方(=西洋医学)を日本の医学に変えることを
決意し、明治16年以降は西洋医学を学んだものしか、医師の
免許を与えないことになりました。

すなわち、明治中期以降は、文明開化の波に乗り、伝統医学を
否定し西洋医学のみを医学として採用することになったのです。
伝統医学については、明治16年以前の開業医のみ、診療を許される事態に。

漢方は、終戦後の昭和25年に日本東洋医学会が設立され、昭和42年に
エキス製剤4処方が保険収載になるなど、少しずつ再興しました。
現在、全国80の医学部で医学生への漢方教育が行われている。

漢方というと、異端、古い、効かないというイメージがあるかも。
しかし、歴史的には日本の本流であり、マイルドな治療法です。
もちろん5分で効く漢方薬も沢山あります。

こむら返りへの芍薬甘草湯や、
咽頭神経症への半夏厚木湯です。
これらは、たった5分で確実な効果が出ます。

現在問題となっている多剤投薬。「漢方への置き換え」は解決策になり得ます。
漢方は、何種類か(時に十数種類)の生薬の合剤です。
それも、1+1=2ではなく、3、4となる組み合わせです。

たとえば有名な葛根湯は、後漢の時代からある「レシピ」です。
2000年間の歴史を経て残った「レシピ」が葛根湯なのです。
現在使われている西洋薬の歴史は、長くても30年程度です。

さらに、「漢方という思想」は、「和の思想」であり、超高齢化社会
に大変適した考え方であることを説明しました。
経済的にも、相互作用の軽減にも大きな威力を発揮します。

総合医、総合診療、プライマリケア、家庭医、
かかりつけ医……なんて、言葉などどうでもいい。
漢方的に、全人的に患者さんを診られるのかが問われる時代です。

特に在宅医療には、衰弱した人、虚弱した人が沢山おられます。
「補剤」とは、「元気になる薬」のことですが、それが豊富なのは
漢方であり、西洋薬にはあまりありませんし、副作用もあります。

さらに今は、西洋薬と漢方薬の併用ができる時代です。
私が開業した時代には、併用は許されませんでした。
ですから上手に併用して、いいとこ取りを目指して欲しいのです。

PS)

在宅患者さんの室内熱中症が多いです。
塩分を少し多く含む水分をしっかり取ってください。