《1560》 まだまだある「薬をやめたら別人」のケース [未分類]

「お袋のアルツハイマーが進行して寝たきりになった!」
そう叫びながら飛び込んでこられた長男がおられました。
たいていそんな相談は、診察終間際か終了後なのです。

「いつからアルツハイマーなのですか?」
「2~3年前からやけど、今月に入って急に悪くなった!」
「今月に入って……?」

アルツハイマー型認知症は慢性の病気です。
5年、10年かけて徐々に進行すると言われています。
それがたった1カ月で悪くなったと聞いたらオカシイ。

「なにか薬は飲んでいますか?」
「はい。認知症の特効薬を2つも飲んでいます」
お薬手帳には、アリセプト10mgとメマリー20mgが。

それにセロクエル、抑肝散、リスパダールなどの向精神薬も。
加えて糖尿病の高血圧関係が、6種類ほど。
全部で12種類ほどの投薬内容でした。

アリセプトが10mgになったのは先月とのこと。
認知症専門医から、詳しい説明を受けていました。
今後予想される誤嚥性肺炎や胃ろうに関する相談です。

お母さんは、元々学校の先生で真面目な性格だったと。
それが、うつ病になり閉じこもりがちになって歩き方も
おかしくなり、ついに幻視も見られるようになったと。

これを聞いて、「それはレビー小体型ではないか!」と
ピンときました。
そこで抗認知症薬と向精神薬をすべてやめてみました。

食事は細いが、少し食べられるので、メネシットという
パーキンソン病のお薬を1錠だけ出してみました。
とにかくアルツハイマー病ではない、ことは分かりました。

1週間後に訪問しました。

これは誰?
そう思うくらい、笑顔のご婦人が玄関に立っていました。
まさしく別人、でした。

もっと驚いたのは、ご家族。
「先生、これは奇跡ですか?」
「いや、私はただお薬を止めただけです。なにせ迷医ですから」

こんなことがあるので、認知症の在宅医療は止められないのです。

PS)

今日は、大阪で2つ講演。
明日は鹿児島です。
みなさん、熱中症に注意してください。