長谷川式テストという有名な認知症テストがあります。
長谷川和夫先生(聖マリアンナ医科大学名誉教授)が1974年に
考案されたものですが、1991年に改訂され、現在は
「改訂長谷川式スケール」(HDS-R)と呼ばれています。
おもに記憶に関係した9つの質問で構成され、30点が満点です。
20点以下だと「認知症疑い」となりますが、これで診断する
わけではなく、あくまで診断の目安のひとつと考えてください。
質問に患者さんが口頭で答えるもので、言語性知能を診断します。
アルツハイマー病の検出には優れていますが、ピック病や
レビー小体型では、高得点になることがあります。
うつ状態であったり、検査に非協力的だと点数は低くなります。
一方、MMSE(ミニメンタルステート検査)という欧米で標準的な
検査も広く使われています。
これは、1975年に考案されたもので、数十カ国で使われています。
この検査の注意点は、いきなりこれをするとバカにされたと怒りだす
人がいることです。
これは、動作性検査を含むからで、プライドの高い人には
改訂長谷川式スケールのほうが適しているかもしれません。
ちなみに私のクリニックでは、両方を使い分けています。
改訂長谷川式スケールでは検出できない動作性知能の検査として
「時計描画テスト」も広く行われています。
B5サイズの紙3枚に、時計の絵を書いてもらうだけの検査です。
この検査は、認知症の種類や程度が推定できる有用なものです。
簡単で負担が無く、費用もかかりませんから、初診時に必ず
行うべき検査だと思います。
こうした簡易検査と詳細な問診で、だいたいの診断がつくものと
思っています。
もちろん確認のためにCTやMRIなどの画像診断も必ず行います。
改訂長谷川式スケールやMMSEは、診断の際にも必要ですが、
治療経過の評価材料としても有用です。
これが無い認知症診療はあり得ません。
まとめると、改訂長谷川式スケールは認知症診療の入り口で土台。
これだけで何かを言えるわけではありませんが、定期的に調べると
病状の進行が点数の推移で把握できる、たいへん簡便な指標です。