《1600》 死亡体験カリキュラム [未分類]

このお盆は、台湾に視察と講演に出かけていました。
ゴールデンウイークに初めて台湾に行って以来、すっかり
台湾が気に入ってしまいました。

今回は「仁徳医専」という医療系の専門学校を訪問しました。
台北から車で2時間くらい場所。
看護師、理学療法士、社会福祉士などを養成する学校です。

生徒数は7000人と、日本のちょっとした大学より立派な造り。
大学内に「死の教育」のための建物があり、そこで行われている
「死亡体験カリキュラム」を体験するために行ったのです。

この存在は、ネットで見つけました。
ここに来た日本人の医療者は、私がはじめてでした。
GWに行った成功大学の緩和ケア病棟も同じでした。

建物の入り口には、こう書いてありました。
右に「生を貪り、死を考えないものは入ってはいけない」、
左に「しっかり養生して死を受け入れるものだけ入ってよろしい」。


 

入るといきなり葬儀場でした。
まずは、死に装束に着替えさせられます。
自分の遺影を撮影し、額に入れて自分で持たされます。

そして次に、「遺書を書く部屋」に入ります。
机に座って、自分の遺影を前に置き、遺書を書くのです。
そこでほとんどの学生が泣きだします。


 

机の上には涙を拭くテイッシュが置いてありますがすぐに無くなると。
私も遺書を書きだすと、なんだか悲しい気持ちになりました。
その次に、いよいよお棺の部屋に移ります。

数個の豪華なお棺が並んでいて、そこに入りました。
その中で、予め書かされた、死後のメッセージを読み上げます。
「お父さん、お母さん、友達よ、ありがとうございました……」

ここでまた、18歳の生徒たちは号泣するそうです。
そしてお棺のふたが閉められると、真っ暗闇になります。
お棺の部屋全体に荘厳な音楽が鳴り響いています。

そこに、お棺に釘を打ちつける金槌の大きな音が響きます。
カーン、カーン、と。
「ああ、本当に死んだんだ。焼かれるんだ」という気になります。

10分間程度、お棺の中で瞑想に入ったでしょうか。
扉が開かれた時はなんだか生まれ変わったような不思議な気分でした。
カリキュラムはこれで終わりではありません。

次の部屋では、死後のイベントが続々と待っていました。
遺体の洗浄練習、修復練習、葬儀の練習……。
自分の死の周辺を、リアルに再現するのです。

そして、グリーフカウンセラーとゆっくり話し合うそうです。
こうしたカリキュラムを2日間かけてやるそうです。
学生全員ではなく、その授業を受けたい人だけ受けます。

みなさん、死亡体験カリキュラムを受けると、素行が変わるそうです。
真面目に授業を受けるようになる。
タバコを止め、ちょっとした不良は見事に更生するという「副作用」も。

校長先生とこのカリキュラムを作られた先生とも懇談しました。
台湾でこうしたカリキュラムがあるのは、この仁徳医専だけです。
台湾の文部省から、お棺に2000万円以上の予算がついたそうです。

仁徳医専のクリスタルと旗をプレゼントされました。
クリニックの2階に飾っています。
ちなみに、校長先生とちゃんとアポを取ってから訪問しました。

私は50歳時に納棺体験はしていますし、講演でよくその話をします。
しかし単にお棺に入るだけでは、不十分であることがよく分かりました。
死の前後、遺言や感謝の言葉、そしてカウンセリングも大切なのです。

日本でこんなカリキュラムは皆無です。
それどころか、死生学を教える授業も皆無です。
仁徳医専を見習えば、日本の医療は大きく変わると確信しました。