《1617》 日本の尊厳死と欧米の尊厳死 [未分類]

「尊厳死」(Death with Dignity)という言葉は世界中で使われている言葉です。
日本で使われている「尊厳死」は、平穏死・自然死とほぼ同義です。
しかし欧米の Death with Dignity とは、医師が介助する死のことを指します。

日本で使われている尊厳死・平穏死に相当する外国語といえば自然死でしょうか。
自然死はもはや当たり前の事として、1970年代から法的に担保されています。
しかし日本では、平穏死・自然死さえ、現在も法的にはグレーゾーンです。

もう少し、詳しく述べるならば

  • 延命措置の不開始だけでなく、
  • 延命措置の中止をも含む概念

が、日本語における「尊厳死」です。

さて欧米における“Death with Dignity”とは「医者が介助する死」のこと。
死期が近いと判断された患者さんがそれを望んだら、医師が処方した錠剤
(多くはバルビツレート系薬剤)を飲んで死ぬことを言います。

末期がんで痛みが強い時にはモルヒネ等の投与による緩和医療が行われます。
これは緩和的鎮静(Palliative Sedation)と呼ばれますが、欧米ではそれでたとえ
死期が早まったとしても全然構わないとされ、これも Death with Dignity です。

「医師が介助する死」「医師が介助する自殺」とも呼ばれるのが Death with Dignity。
末期がんにおける Palliative Sedation も、死ぬとわかっていて錠剤を飲ませるのも Death with Dignity。
日本の尊厳死・平穏死・自然死とまったく違うものなのですが、誤解されています。

以上のように日本と欧米で[尊厳死]という言葉の内容はかなり(全く?)違います。
それを補うかのように「積極的安楽死」や「消極的安楽死」という言葉が書籍等で
よく使われているようですが、私は自分が理解していないので使ったことがありません。

個人的には「尊厳死」という言葉が終末期の議論を混乱させているように思います。
多くのマスコミは、「尊厳死」という意味をよく知らずに使っているのではないか。
「尊厳死法制化」「尊厳死議連」「尊厳死議論」などという言葉も私は使いません。

いっそ「尊厳死」という言葉が世の中からなくなったらなあ、と思うことが増えました。
いつかそうなるだろうと考えたので、石飛幸三先生の造語である「平穏死」を用いた
本を書いたり講演をしてきました。

難しい言葉、「いかつい」言葉は、私は嫌いです。
誰でも分かりやすい言葉を用いて、死を議論すべきだと思います。
実は「平穏死」という言葉さえ、本当は嫌いです。

死は死でしかないからです。
毎週のようにみる平穏死された方も家族も、誰もそれが「平穏死」だと思っていません。
死に形容詞をつけること自体、上から目線に思えて、そんな自分がイヤになります。

しかしこの世に、言葉というものがあり、言語という道具を使ってコミュニケーション
する動物が人間というものでしょう。
その意味では今、シカゴで英語があまり分からない自分は「半分人間」なのかなと思います。

いずれにせよ、日本の尊厳死と欧米の尊厳死は違うものであることは知っておいて下さい。
近く、おそらく尊厳死という日本語は使われなくなるだろう、と漠然と思っています。
明日は、安楽死について考えてみましょう。