《1650》 「病院から放置された」と免疫療法に [未分類]

「長尾先生は、免疫療法についてどう思いますか?」

よく聞かれる質問です。
一言で言うと、「よく分らない」です。
以前に書きましたが、効いた!という例を見たことがない。

免疫療法といっても、いろんなものがあります。
有名な丸山ワクチンも免疫療法だし、
漢方薬の補中益気湯(ほちゅうえっきとう)も免疫療法だと思います。

先日、かなり進行した胃がんが発見された
92歳の男性の在宅医療を依頼されました。
訪問すると、食欲がなくかなり衰弱していました。

親孝行な息子さんと娘さんがおられて一生懸命介護していました。
病院の担当医に「手術が無理なら、抗がん剤で治してくれ!」と
懇願されたそうです。

しかし主治医は、「もう治療はできない」の一点張り。
子どもさんは、「病院から捨てられた。放置された」と受け取ったようです。
末期に近いことや92歳という年齢を考慮すれば妥当な判断だと思います。

しかし、なんとか「治療」をすることを諦めない子どもさんは、
インターネットで免疫療法について検索したことを、私はずっと後になって知りました。
秘かにタクシーに乗せて、免疫療法クリニックに通院していたようです。

採血をして、免疫細胞を培養して、点滴で患者さんの体に戻す。
がん組織がとれない場合は、こうした割と簡単な方法で行うそうです。
点滴は、30分程度で終わります。

ある日、訪問すると免疫クリニックの先生が訪問して点滴をしていました。
最近は、在宅で行う免疫療法もあるようです。
一度とった血液は体内に戻さないと、免疫療法を行ったことになりません。

その費用を聞いて驚きました。
なんと200万円だそうです。
子どもたちが長期ローンを組んでなんとか工面したと聞きました。

決して裕福な家ではありません。
しかし親孝行な子どもは、藁にもすがる気持ちで「治療」していました。
その「治療」の数日後に92歳の男性は自宅で「平穏死」されました。

同様の光景を何度も見てきました。
看護師が、ゆうパックで送られたきた点滴をしたこともありました。
高額なお金は「先払い」しているので何としても体内に戻さないと。

私たちの在宅医療の自己負担は、1カ月で最大でも1万2千円です。
しかし免疫療法はその200倍もの値段。
家族は、それだけの価値があると納得しているので私は何も言いません。

しかしせめて数万円程度で受けられたらいいのに、と毎回思います。
結局、効く、効かないより、値段の高さに、
同じ医療者として複雑な思いで免疫療法を眺めています。

ただ「放置された」と感じた方の一部は、免疫療法に流れています。
また「自らの意思で放置を選択した」方も、免疫療法に流れています。
しかし本来は免疫療法も治療なので「放置」ではないと思うのですが。