《1652》 アメリカの29歳女性の安楽死 [未分類]

アメリカの29歳の女性(ブリタニーさん)が「11月1日に安楽死する」
というインタビューをネットに投稿した報道が、大きな話題になっています。
脳腫瘍で余命半年と宣言された、とのことです。

アメリカでは、オレゴン、ワシントンなどで安楽死が合法化されています。
ブリタニーさんは、安楽死が認められているオレゴン州に引っ越して死ぬとのこと。
私は、この報道を聞いて、大半残念に思いました。

  1. 余命半年、というのはよく外れる。
    過去に余命1~2週間と宣告された脳腫瘍の方を在宅医療で診たが、
    数カ月以上生きて生を楽しまれた。
    余命3カ月と宣告された方は、1年以上生きて楽しまれた。

  2. 彼女は、充分な緩和ケアを受けているかという疑問もあります。
    動画を見ると、彼女は「いずれ苦しむであろう」という不安から
    逃れたくて安楽死を希望しているように見えました。
    決して、本当に死にたいと思っているわけではないはず。
    本当にそうなら、動画をネットに投稿したりしないでしょう。

さまざまな緩和ケアの余地があるように感じました。

彼女が行おうとしている安楽死とは、「医師が介助する自殺」です。
医師が薬剤を投与して、死期を早める(死なせる)ことです。
日本で行った場合は当然、医師に殺人罪が適応されます。

日本では安楽死以前の尊厳死でさえ、殺人罪の可能性がある「グレー」です。
多くの医師は告訴を恐れて、過剰な延命治療に走ります。
それは医師が悪いのではなく、社会の圧力がそうさせているのです。

先月、ブリトニーさんのような安楽死ツアーを行っている欧米の医師や
自殺ほう助団体を支援している市民といろんなお話をしてきました。
2年前にはスイスの自殺ほう助組織、「Dignitas」を見学しました。

私が違和感を持ったのは、外国に行ってまで死ななければいけないこと。
イギリス人は家族・友人とわざわざ海を渡って、スイスで死にます。
警察の検死が入って、骨になってから祖国に帰ります。

日本では、もちろん自分の家で死ねます。
しかし、わざわざ病院で死ぬ人が8割です。
それも管だらけになって溺れ死ぬ人が多い。

日本の溺れ死にも、私に言わせれば安楽死です。
薬物で人工的に死期を早めるのが、安楽死です。
過剰な延命治療によって溺れさせているのです。

主治医も患者さんも気がついていないだけです。
どちらが罪深いのか?
私はそんな想いで報道を眺めていました。

いずれにせよブリタニーさんは毎年安楽死する何百人のうちの一人。
珍しくはありませんが、ネットに動画を投稿したことが珍しいのです。
しかしそのお陰で、世界中に議論が喚起されたことはいいこと。

私は、叶うならばブリタニーさんに尼崎まで来てほしい。
尼崎や阪神タイガースを楽しむ時間が、充分に残されています。
そうしているうちに気が変わる可能性がある、と思っています。