《1655》 非日常のための日常 [未分類]

人間は徘徊する動物である!
徘徊で認知症は良くなる!

最近の講演では、よくこんな話もします。
今回、認知症の人と介護者たち総勢40名が
沖縄まで旅行した意味は、一体なんだろう?

帰り道、車を走らせながらずっと考えていました。
ガラガラの飛行機の中でも久々にボーと考えていました。

何のためにここにいるの?
私は誰?

自分が気がついたことは、

確かに移動したこと
確かに徘徊したこと。

宴会芸の後は、たらふく飲んで、そのまま倒れ込んで寝ました。
翌朝、目が覚めた時には自分がどこにいるのか本当に分からなかった。
カーテンを開けると、岬の前の灯台と青い海が見えて沖縄を感じた。

トンボ帰りの車窓から見える海が、とてもいとおしく感じました。
空気、海の色、行き通う人の顔など、すべてが新鮮で、日常とは違う!
そう非日常! それを感じるためにここまで来たんだ。

人間はじっとしていたら錆びついてしまう。
だから動かなければならない、
たとえ車椅子であっても、人に押してもらっても移動したほうがいい。

帰りの飛行機の中に、ハンモックのような簡易ベッドがありました。
横たわっていたのは、おそらく生まれつき障害を持つ子供さんでした。
両親と思われる2人が横に付き添っていました。

搭乗する時に、思わず、「私は医師なので、なにかあれば言ってください」と
声を書けると、お母さんは、笑顔で「ありがとうございます」と。
降りがけにも思わず声をかけてしまいました。

「旅行ですか? 用事ですか?」
「旅行です!」

この少年も沖縄を移動して、非日常を満喫して大阪に帰るところでした。
飛行機の出口を出たらすぐに、背の高い車椅子とベッドの中間のような
ものがちゃんと用意されていました。

99歳の富ちゃんもこの少年も歩けないけど、空を飛んでいました。
文明の利器を目いっぱい利用して、南の島を楽しめました。

時々、普段と違うことをする喜び。
非日常のために、日常があるのか。

そんな余韻に浸っています。