《1683》 医師法21条に関する最高裁判決 [未分類]

医師法21条の解釈を巡って、医療界は揺れています。
その専門家である田邉昇弁護士(医師)は医師法21条の
解釈の変遷について解説されました。

医師法21条
「医師は、死体又は妊娠4カ月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、
24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない」

1994年に出た日本法医学会の異状死ガイドラインでは、
「明らかな診療中の疾病死以外は全て異状死」とされ、
21条の拡大解釈との批判がありました。

その経緯については当時、脳死移植を進めている現状があり、
脳死判定につなげたいという背景があったと説明されました。

そして、1999年に起きた東京都立広尾病院事件では、
担当医と院長が異状死体の届け出を定めた医師法21条違反
に問われました。(担当医は略式命令で終了)。

(1)異状死体の定義(A:「異状」とは、外表面説か、経過異常説か、
B:「検案した医師」とは診療中の死亡診断は、検案に当たるか)と、
(2)医師法21条は黙秘権の侵害に当たるかの2点が裁判の争点でした。

そして都立広尾病院事件の2004年の最高裁の判決では、
「検案とは医師が死因等を判定するために死体の外表を検査すること」
「検案して異状があると認めた時は警察署に届け出る」とされ、
「外表面説」を採用する内容でした。

(2)の医師の黙秘権についてはあくまで「外表の異状」の有無を
届け出るにすぎず、「届出人と死体とのかかわり等、犯罪行為を
構成する事項の供述までも強制されるものではなから、
憲法38条で保障される黙秘権侵害に当たらない」とされました。

以上は、すなわち違憲判決をするのではなく、医師法については
合憲限定解釈をし、黙秘権侵害の問題を解決したことになります。

田邉氏は、外表面説を取る医師法21条の届け出範囲は意外に狭いため、
「医師法21条による介入を恐れて、医療事故調を作るべきという
議論は誤りである」と強調されました。

また厚労省や医師会が、医師法21条の解釈を医師や市民に
正しく伝えないことも問題として指摘しました。
私も田邉氏の見解にまったく賛同するものです。

一般の市民にとっては、何の関係もない話に聞こえるかもしれません。
しかし医師は、全員、まずは訴えられないことを考えて医療をします。
すなわち「医師法21条」が、かならず頭の片隅にあるものなのです。

だから医療機関で、あれほど承諾書にサインをさせられるのです。
医師と患者の関係とは、一つ間違えれば、被告と原告の関係に
豹変する可能性を常に秘めています。

ですから、訴訟の根幹をなす医師法21条の憲法解釈はすべての医師
にとって根源的な問題であり、その解釈次第ではハイリスク科(外科や産科)
の医療崩壊が加速する可能性があるため、極めて重要な議論なのです。

PS)
昨夜は、群馬県前橋市で終末期医療について講演しました。
医師会長と市長がしっかりタッグを組んで認知症ケアに
取り組む決意を表明され、とても頼もしく感じました。

このように、これからは医療界と行政・市民が普段から
近い関係を構築しておくことが大切だと思います。
前橋市のような自治体が、良い見本となって欲しいです。