《1685》 明日は我が身の医療事故 [未分類]

医療の質と安全は、患者さんにとって最も大切なものです。

同様に、医療者にとっても一番大切なものです。

しかし、医療事故にあったとき市民はどう対応したらいいのか、
お医者さんはどのように考えているのかは、よく知られれていません。

昨日までの5日間は、今週開催されたばかりの「医学会」における
最新リポートとして、ここでご紹介させていただきました。
繰り返しになりますが、医療のもっとも本質的な議論なのです。

医療事故の頻度は、医療の高度化に比例します。
開業医においても、決して無縁の話ではありません。
そしてそもそも何が「事故」なのか、定義も問題になります。

・インフルエンザワクチン接種のあとが赤く腫れた
・採血で針を刺したあとが1年経ってもチクチク痛む
・高血圧で20年通院したが気がついたら肺癌の末期だった・・・

これらは医療事故でしょうか?
それとも不可抗力でしょうか?
みなさまはどう思われますか?

あるいは、大きな病院にかかったとき、
・がんで腹腔鏡手術を受けたが経過が思わしくなかった
・薬の副作用で、全身に激しい薬疹が出て入院した
・コレステロールの薬の副作用で筋肉痛で死にそうになった・・・

さらには、
・院内感染で重症肺炎に陥り死亡した
・入院中に、エコノミークラス症候群で突然死した
・手術は成功したが、1カ月後に誤嚥性肺炎で亡くなった・・・

病院にかかっている人なら、誰でもこうした当事者になる
可能性を秘めています。
いざ、自分が当事者になった時、どんな行動を取りますか?

・泣き寝入りする
・弁護士事務所に駆け込む
・警察に電話する
・役所や厚労省に電話する・・・

さまざまな反応があるのでしょう。

いずれにせよ、日本は法治国家ですからすべて法律に基づいて
処理されますが、裁判の場合は年単位の時間が必要になります。
その間に、当事者も担当医も担当事務長も、かなり疲弊します。

特に担当医は、マスコミ報道されれば医者ができなくなります。
メディアは深い検証のないまま、短絡的に「医療事故」として
報道しますが、実際はその後にはたいへんな道が待っています。

よく「予期せぬ事故」とか「予期せぬ死亡」と言われますが、
そもそも「予期」とは何でしょうか?
私は医療とは常にリスクであり、死亡する可能性があると思う。

絶対安全など、いくら訓練しても永遠にあり得ないと思います。
しかしそうは言っても、それなりの理由や過失があるから事故
が起きてしまい、不幸なことが起こり得るのも医療の本質です。

テレビのドラマやドキュメンタリーに登場するブラックジャック
に憧れるのは、古今東西、未来永劫、変わらないと思います。
汚いものなど、誰も見たくありません。

しかし現実には、不可解な転帰や結果が、日々起きています。
こうした医療の「負の側面」から、最良の医療を求めて日々
取り組んでおられる医師や弁護士さんがいることを知って欲しい。

彼らは常に日陰の存在で、表舞台に出ることはほとんどない。
しかし、裏方として極めて重大な任務に挑戦されています。
実は、私自身も広い意味で、彼らの仲間でもあるのです。

幕張メッセでのシンポジウムのあと、仲間たちが会場近くに
集まり、一緒にオムライスを食べました。

医師法21条と医療事故を真剣に考えている人たちが会しました。

みなさん超多忙な人たちばかり。
ネットやメディアではお互いよく知っていますが、実際に
こうしてみんながそろって顔を合わせることは至難の業です。

シンポジストを務められたある医師は私にこう語りました。
「私はこの15年間、1日も休まず、これで働いています」
土日祝も関係無く、医療事故の処理にあたっているのです。

こうした医師や弁護士の存在もぜひ知って頂きたいと願います。