《1716》 医療は遠くの長男・長女のためにある? [未分類]

昨夜は今年で一番よく働いた日でした。
というのも、年末なので遠くの長男、長女が帰省して
老いた親を見て驚き、呼び出され、説明したり謝罪したり。

「私の親はこんな姿じゃない!」

「こんなに弱った親は、子供として見てられない!」

「もっといい医療を施せば、こんなにならないはず!」・・・

がんや認知症や老衰で在宅で診ている患者さんの家に
遠くの長男・長女が帰省して奇声(?)を上げるのが年末。
変わり果てた親の姿が受け入れられれず、呼び出されます。

在宅医療なんてものは、子供世代には全然信用がありません。
在宅=何もしない、できない、三流医療、
というイメージがまだまだ根強いようです。

現代は、ネット社会ですから、どこどこの病院ではこんな
最新治療を受けられるなどという医療情報が溢(あふ)れています。
特にがんや難病に関しては玉石混交の情報が並んでいます。

遠くの長男・長女は、変わり果てた親を見て
「どうしてこんなになるまで放っていたのだ」と聞いてきます。
決して放置していたわけではなく、できる医療はやっているのだが。

久々に見て受けたショックを医療者にぶつけてきます。
医療者が納得のいく説明を要求されるのが年末なのです。
だからいつもと違う忙しさがあります。

本人は、いたってケロッとして笑顔です。
しかし遠くの長男・長女は、大騒ぎ。
近著「家族よ、ボケと闘うな!」ではありませんが、闘おうとする。

遠くの長男・長女は、100%病気や障害と闘おうとします。
特に、子供が医療・介護関係や教育者の場合は、最悪のパターンです。
医者に食ってかかる子供には、当の親も困っているようです。

私たちは、心の中で叫びます。

「あなたさえいなければ!」

「だいたい今ごろ来て、何を言っているんだ」

「そんなに気になるなら、なぜもっと早く見に来ないの?」

この三つの言葉は、完全NGワードです。
もし口を滑らせたら、大変な事態になります。
しかし、心の中で叫ぶのがこの時期なのです。

家族ケアばかりに手を取られていると、こうつぶやきたくもなります。

「医療は遠くの長男・長女のためにある?」

家族の権限が、異常に強大なのが、日本の医療の大きな特徴です。
その強大な「権力」に振り回されるのが現場の医療・介護者たち。
本人はいたって満足していても、遠くの長男・長女は必ず騒ぎます。

PS)
今年も大変お世話になりました。
今年も1日も欠かさず書くことができました。
これも陰ながら支えて頂いた、読者のみなさまのお陰と感謝します。

みなさまにとってどんな1年でしたか?
私にとっては、最高の1年だったと感謝しています。
健康で仕事ができているのがなによりです。

正直、連日、電話が鳴りっぱなしで家にいる時間は少ない。
今朝も一番から独居の孤独死? かどうかの確認に呼び出され。
それをしている間に、他でお看取り、そしてまた別の緊急往診。

ゆっくり寝たり風呂に入ったりする暇もありません。
食事は、昨日も今日もすき屋や吉野家です。
大掃除や買い出しは諦めています。

大晦日でもスタッフは今夜も働いています。
24時間365日対応とはこんな世界です。
でも人のために働ける喜びがあります。

みなさま、よいお年をお迎えください。