《1745》 チンしたら生き返る!? [未分類]

先日、真夜中に旅立たれた在宅患者さんがいました。
徐々に衰弱し、最後に診察したのは旅立ち3日前でした。
ご家族から電話があった時、私はかなり遠方にいました。

また運悪く、看護師にもすぐには連絡がつきませんでした。
そんな時もあろうかと、あらかじめシミュレーションもしています。
またご家族には、看取りについて詳しい説明をしていました。

携帯電話をテレビ電話として使い、息をしていないことを
リアルタイム動画で確認して、旅立ちの時間を確定しました。
すぐに行けない時にはそうしますが、法的に問題ありません。

しかしご家族は亡くなっていることを受け入れてくれません。
なんと、こう言われました。
「まだ温かいのに、亡くなっているなんておかしい!!」

私は1時間かけて亡くなっていることを説明しました。
「呼吸が止まったら、ほぼ同時に心臓も止まります。
 それを死ぬというのです」と。

しかし家族はまだ納得されません。

「まだ温かいのに、死んだとは何事だ!
 お前はそれでも医者か!」

「亡くなってもすぐに冷たくはなりません。
 ゆっくりゆっくり冷たくなっていくのです」

「先生、そんなことを言っている暇があったら
 温めてくれませんか。
 まだ温かいから、温めたらきっと生き返ります!」

「いや、1時間も呼吸が止まっていたら、いくら頑張っても
 生き返りません。チンして生き返るようなものではないのです」

「先生、なんでそんなことが言えるんですか?
 私たちは諦めませんから、なんとか生き返らせてください」

「・・・」

亡くなったことを認めてもらえないご家族は
みなさん、すでに古希を越えた方ばかりです。
おそらく亡くなった人を、1度も見たことが無いのでしょう。

昨日、もっと在宅医療を知って欲しい、と書きました。
もちろん看取りについても、多くの方に知っておいて欲しい。
そのためには、小学生時代から教育すればいいのですが。

多死社会がどんどん進行している日本なのに、
「多死」という文字すら分からない医者がいるのも事実です。
急性期病院のお医者さんには「人は死ぬ」という話をします。

「日本で年間に亡くなる人は増えているか? 減っているか?」
もちろん増えている、が正解ですが大半の医者は、減っていると。
理由を聞くと「医学が発達しているから人はそう死なない!」と。

医者も医者なら、市民も市民。
生きること、生かせることは一生懸命考えますが、
死ぬことや、看取ることはあまり考えません。

死をタブー視することをそろそろ考え直す時期ではないのか。
つくづくそう思う日々ですが、みなさまはどう思われますか?