《1754》 天候予測と余命予測 [未分類]

一昨日は、東京に雪が降るという天気予報が外れました。

「少しだけ降りましたが、1cmも積もりませんでした」
という言い訳のような残念コメント(?)には笑いました。
天気予報は時に、大きく外れます。

「なぜ、天気予報が外れたのか?」という解説を聞きながら
後からだと何とでも理由付けできるし、解説する必要も無いのに、
なんて思いました。

天候の予測は、自然現象なので100%とはいきません。
過去100年間の統計を分析しても外れることがあります。
東北の震災も何百年に一度の天災と言われました。

患者さんの余命予測も、よく外れます。

余命1時間と宣告して3年生きた人。
余命3カ月と告げて1時間後に亡くなられた人。
末期がんで余命2カ月と言われた人が、8年も生きた……

先日、テレビで黒田裕子さんの特集をみていても、
余命数カ月と告げられた2週間後に旅立たれていました。
末期がんの余命予測は、外れまくりです。

10年前のある研究によると、病院で余命3カ月と宣告された
人の、その後の実際の在宅期間(余命)は1カ月だったそう。
つまり、実際の余命は予測値の3分の1だったと。

これでは、とても「予測」とは言えないのかもしれません。
まあ、この発表の後、病院の余命告知が厳しめになった
とは聞いていますが。

天候予測と余命予測は、どこか似ていると思いました。
生命の営みも自然の一部です。
どちらも「ゆらぎ」や「f分の1」の世界と関係します。

天候も余命も確実に予想できると考えるとおかしなことになる。
ある程度の不確実性をはらんでいることは、当たり前のことです。
もし外れたら、「よかった」と思えばいいだけ。

悪い天候予測のおかげで、1人の患者さんの命が救えました。
東京での予定をキャンセルして地元で雑用をしていたのです。
そうしたら朝から深夜まで、電話がたくさん鳴る一日になりました。

救えた命は、私が診ていた患者さんではありません。
たまたま通りすがりのように、その場にいたから助けられました。
その患者さんにしてみれば、天候予測に命を救われたことになる。

世の中、不思議なご縁で成り立っているのですね。
自然のゆらぎのおかげで医者らしい仕事ができた。
たとえ外れても、厳しい予測が出たことに感謝しています。