《1826》 地元の市民病院よりも都心の大学病院? [未分類]

がん医療、ここが分からないシリーズ・19

地元の市民病院よりも都心の大学病院に行くべきでしょうか?

Q. 乳がんが再発してしまいました。

前回は地元の市民病院で手術と化学療法を行いましたが、東京に住む娘が、地元の市民病院よりも都心の大きな大学病院で診てもらいなさいと強く言います。

「田舎の病院と都心の大学病院では医師の腕がぜんぜん違うはずだ、最初の手術から有名病院でやれば再発しなかったかもしれない」と。

そういうものなのでしょうか。


A.
 いまさら、過去のことを「タラレバ」で論じても仕方が無いので
   前向きに今後のことを考えてみましょう。

   地元の市民病院よりも都心の大きな大学病院を勧める娘さんの頭には、
   医者の腕が違うのではないか? という思い込みがあるはずです。

   たしかに両者では、同じ乳がんでも扱う症例数が大きく違うでしょう。
   医者の腕も違うのかもしれませんが、結局は担当する主治医によりけり。

   がん対策基本法では、両者に差があってはいけないと謳われてはいますが
   現実には、設備や技術がまったく同じとはなっていません。

   がん診療拠点病院であっても放射線治療ができない病院もある。
   常勤の病理医や麻酔医の数が不足している病院もあるようです。

   しかし、あなた自身は今の地元の病院の主治医に満足していますか?
   大好きですか? それとも信用できないので変えたいですか?

   私は、あなたがこれまでの治療に満足しておられるのであれば、
   わざわざ都心の大学病院に移らなくてもいいのではと思います。

   なぜなら、例えば化学療法であれば、メニューは大きくは変わらないはず。
   すなわち、今後の経過に大きな差があるとはあまり思えないからです。

   むしろ、移動に伴うストレスのほうを懸念します。
   免疫力の低下は、がんの進行を確実に速めます。

   がんは、助かる人(完治する人)と、助からない人(がんで死ぬ人)に分かれます。
   おそらく助からない可能性のほうが高そうなので、どれだけ延命できるかの話です。

   ですから、これまでの経過に納得、満足していれば現在の病院でいいのではないか。
   もし満足していないのであれば、娘さんの勧める大学病院に転院されてもいい。

   その前にセカンドオピニオン制度を活用すべきでしょう。
   言い出しにくくても、言わないと、資料をもらえません。

   娘さんの意見に迷われているようですが、まずは自分自身がどうしたいかによります。
   がん医療においては、患者さんと主治医との関係性がなによりも大切だと考えます。