《1901》 米国でのオキシコドンの使用実態 [未分類]

トヨタの女性役員が麻薬取締法違反の容疑のため、逮捕されました。

中身が「ネックレス」と記載されていた米国からの国際宅配便の小包に、
麻薬である「オキシコドン」錠剤57錠が入っていて、密輸の疑いです。

この事件は大きく報道されていますが、皆さまはどう受け止められたでしょうか?
「麻薬ってやっぱり怖そう」という印象を受けた人が多いのではないでしょうか。

そもそもアメリカではオキシコドンという薬はどんな実態になっているのでしょうか?
以下は、私の知人である大西睦子医師(ボストン在住)に、メールで聞いた内容です。


日米の間では「疼痛(とうつう)管理」について現状に大きな違いがあるそうです。

日米ともに近年、疼痛の緩和やケアがますます重要になっていますが、
しかし両国における鎮痛薬の規制は非常に異なっているそうです。

今回問題になったオキシコドンはオピオイド鎮痛薬とよばれる医療用麻薬に分類されています。
日本では、医師が処方しますが、厳格に管理され主にがんの痛みの治療目的に使われています。

2012年の1人当たりの1年間のオキシコドン平均消費量(mg)は、世界71カ国のうち、日本は32位でした。
世界平均は13.5mgですが、日本の平均は3.6mgで非常に少ない消費量でアメリカの消費量が飛び抜けて多い。

ちなみに、同じオピオイド鎮痛薬であるモルヒネについても、2012年の1人当たりの
年間平均消費量(mg)は、世界158カ国のうち日本は42位でした。
世界平均は6.3mgで、日本は平均のほぼ半分の3.2mgで、やはり常に少ない消費量でした。

一方、米国では、オキシコドンなどのオピオイド鎮痛薬は、手術後のような急性の疼痛から、
さまざまな原因によって3カ月以上も続く慢性の疼痛まで、幅広く使用されているそうです。

オキシコドンは医師の指示に従って使用すれば安全かつ効率的に痛みを管理することができる薬
として広く認知されており、医師であれば、一般的なクリニックでも処方ができるそうです。

つまり米国ではオキシコドンは日本よりも比較的手軽に入手できる、非常に身近な鎮痛薬なのです。
しかし米国ではここ20年あまりで医師から処方されたオピオイド鎮痛薬の使用が急増しています。

全米でオピオイド鎮痛薬が1年に処方された数は1991年の7600回から2013年には2.07億回まで増加。
世界中におけるオキシコドン消費者の81%は米国人と報告されているほど、米国での処方数が多いのです。

しかも医療目的以外で使用した人の70%が、家族や友達からもらったり買ったりしているそうです。
それ以外では18%が医師からの処方、5%が麻薬販売人や知らない人間からの入手されているそう。

オピオイド鎮痛剤は、使用法を誤ると極めて危険な薬でもあります。
大量投与をすると重篤な呼吸抑制を引き起こしたり、場合によっては死に至ったりする危険性もあります。

オピオイド鎮痛薬は医療目的のための管理された使用では依存症を引き起こしませんが、
他の目的で乱用すると、身体的や精神的な依存を引き起こす可能性が指摘されています。

米国では「ピルミル(pill mills)」と呼ばれる悪質なペインクリニックが問題になっているそうです。
ピルミルとは「大量の薬剤を処方する医師や診療所」の呼称だそうですが、行政の監督下にないため、
医療目的以外であっても不適切にオキシコドンなどの強い鎮痛薬を処方しているのが実態だそうです。

ちなみに最も高齢者の人口の多いフロリダ州には1000以上のペインクリニックがありますが、2010年の調査で、
全米の開業医のなかでオキシコドンの購入量が多かった上位100人のうち90人がフロリダ州の開業医だったそうです。

このように、つまり米国ではオキシドコンがあまりにも手軽に入手できるため、多くの人が痛みを緩和するために
医療用麻薬として使用している一方、医療目的ではなくヘロインなどのように乱用されているのが実態だそうです。

過去にはマイケル・ジャクソンが乱用していたとも報道されていましたが、
米国では過剰摂取や乱用、依存症が深刻な社会問題になっているようです。