《1905》 まだ認知されていない「在宅緩和ケア」 [未分類]

昨日も一日中、何組かのご家族に麻薬の話をしていました。
緩和ケアに身を置いていることをあらためて認識しました。

がんが全身に転移した末期がんの患者さんの療養の場についての
話し合いがありました。

本人は最期まで自宅にいたいと明確に希望されています。
しかし家族の間では大きく意見が分かれています。

兄弟はホスピスへの入院を強く希望され、受診予約も取られているとのこと。
在宅でも緩和ケアができることを1時間かけて説明すると、納得されました。

しかしそれを聞いた遠くの長男が来て、大病院への入院を希望されました。
理由を聞くと、やはり痛みを心配してのことでした。

「自宅でも緩和ケアを受けられるのですよ。もうやっていますが」

私のこのひとことで、長男さんは激しく怒りはじめました。
自宅で緩和ケアなんて無理だ、と言い張るのです。

「自宅でも麻薬が使えるのですよ」

このひとことが、長男さんの怒りをさらに増幅しました。
麻薬=危険な薬=大病院やホスピスでないと使えない、と思っているとのこと。

毎日ここに書いているような内容を1時間かけて説明すると、少し納得された様子。
まだ半信半疑のようで、首をかしげながら帰って行かれました。

しかし、すでに私が麻薬の調節をしているので、本人さんの痛みはかなり軽減して
笑顔が出て、食事も少しながらできているので、緩和ケアの結果は出ています。

それでも麻薬の誤解を取るために、1時間程度の説明を2~3回要することがあり、
そうした話し合いは深夜に及ぶことも稀ではありません。

在宅というアウェイの場所では、患者さんの信頼を得ることはすぐにできても
遠くの長男長女、遠くの親戚の信頼を得るには、膨大なエネルギーを要します。

特にトヨタの女性役員の報道以降、正直、私たちの仕事量もかなり増えました。
しかし患者さんの笑顔だけが楽しみで、訪問看護師たちと泣き笑いの毎日です。

在宅緩和ケア。

この言葉は、病院の医師や看護師さえあまり知らないし、信じられていません。
ですから市民のみなさまが信じないのも仕方がないのかなあ、と思っています。

今夜、新大阪で近畿在宅医療推進フォーラムの実行委員会があります。
近畿2府4県の在宅医療のリーダーたち15名が集まり会議をします。

今秋に予定されている市民フォーラムの企画を話し合います。
関西らしく、吉本ばりの寸劇をやることになるかもしれません。

私は全国在宅療養支援診療所連絡会の近畿代表の理事を拝命しているので
在宅医療や在宅緩和ケアの市民啓発の責任者として今夜の会を仕切ります。

世間のたいへんな誤解、マスコミの間違った報道に負けないよう、在宅緩和ケア
というものがこの日本にあることを、粘り強く発信していきたいと思います。