《1911》 麻薬が不要な末期がんもある [未分類]

連日、深夜の往診や看取りに走り回っていますが、
昨夜も真夜中に一人の男性のお看取りがありました。

末期肺がんで余命3カ月、と言われたのが3年半前。
しかし分子標的薬のおかげで寿命が約3年延びました。

1週間前にご家族に「余命1週間」と1時間かけて説明しました。
こうした説明は夜に行うことが多いのですが、大いに驚かれました。

まだ自分でトイレに行けるし、ご飯も少ないながらも食べられたからです。
それでも余命1週間と判断した根拠は、アルブミン値や経験によります。

家族の驚きに対応して、ゆっくり時間をかけて説明すると平穏死の思想や
分子標的薬の中止の件、そして在宅での最期の件に、賛成してくれました。

よく外れる私の余命予測ですが、昨夜(今朝)は当たってしまいました。
15分前まで意識があり、声をかけると目を開けたり手足を動かしたりしていた。

呼吸苦も痛みも無く、吸引器も医療用麻薬もまったく不要な最期でした。
そして、酸素も点滴も管1本無いまったくもっての「平穏死」でした。

肺がんの終末期というと、苦しそうな姿が思い浮かぶかもしれません。
酸素吸入に点滴に喀痰吸引に顔をしかめる患者さんの顔は、病院での話です。

在宅での肺がんの最期は、この方のように酸素も点滴も吸引器も不要。
過去3年間に在宅で看取った肺がん患者さん23人の統計を示しました。

昨年京都で開催された日本肺癌学会でそう講演したのですが、反応は皆無でした。
おそらく平穏死を見たことも聞いたこともない医師ばかりなので信じてもらえない。

この1カ月に数人の肺がん患者さんを看取りましたが、もちろん全員、平穏死。
とくに、昨夜の患者さんは、医療用麻薬もまったく不要な穏やかな最期でした。

末期がん=医療用麻薬、ではありません。
麻薬が不要のまま自宅で最期を迎える人が2~3割いることもぜひ知って下さい。

実は、「自宅にいるという麻薬効果」、「家族という麻薬効果」が大きいのです。
自宅にいるだけで痛みや不安が和らぐことは、精神腫瘍医学的にも説明可能でしょう。

ここに書いていることは日本人で死亡数が最も多いがんである肺がん療養の真実なのですが、
医師でも理解できないことなので、一般の方には理解しにくいかもしれません。

しかし知っている人は、もう知っています。
しかし知らない人が、国民の99%以上。

だから本を書いています。
もっと詳しく知りたい方は以下の拙書を読んでください。

・平穏死10の条件(ブックマン社)
・家族が選んだ平穏死(祥伝社)
・平穏死という親孝行(アース・スターエンターテイメント)
・平穏死できる人、できない人(PHP研究所)
・病院でも家でも満足して大往生する101のコツ(朝日新聞出版社)

PS)
印税は全て、福島県相馬市の震災孤児に寄付しているので子供たちへの支援になります。
7月26日は相馬市、南相馬市、いわき市など福島県内を回る予定になっています。