《1913》 脳腫瘍の患者さんが在宅に紹介されない理由 [未分類]

昨日、脳腫瘍は在宅医療にむいている、と書きました。
しかし医療界ではまだそうした認識は無いようです。

昨年、ある大学病院に脳腫瘍の患者さんの退院前カンファレンスに出向きました。
脳神経外科の講師の先生が主治医で私に病状の経過を詳しく説明してくれました。

手術や抗がん剤の効果をスライドを用いて1時間ほど説明頂いた後に私は呟きました。
「脳腫瘍って、在宅に向いていますからね・・・」

するとその講師は驚き、「そうなんですか?」と聞き返されました。
その講師曰く、脳腫瘍の患者さんを在宅医療に紹介するのははじめてとのことでした。

ほとんど自分の大学病院で看取るか、地域の病院に紹介するそうです。
その理由を聞いて、こちらが驚きました。

「脳腫瘍は管理が大変なので、在宅では無理でしょう?」

私はこれまで脳腫瘍は全例、在宅で看取ってきたことや、言葉の全く通じない
外国人でも在宅で看取ってきた話をするとその講師の先生はさらに驚きました。

その患者さんは、私の本を読んで在宅療養を強く希望して主治医にそう伝えたそう。
主治医は最初は反対して、病院への転院を勧めるも最後は希望に沿うことになったと。

在宅で診た脳腫瘍の患者さんを振り返ると、頭痛や鴨気など脳圧亢進症状らしき症状
が現れた場合、グリセオールという点滴を使うくらいで特に変わったことはしません。

2週間に一度、タクシーを呼んで抗がん剤の点滴のため大学病院に通われていました。
ちょうど半年くらい通ったところで通えなくなり、抗がん剤の"やめどき"となりました。

これを書いているうちに、20歳代の若い脳腫瘍の女性のことを思い出しました。
この方も両親が私の本を読んで、転院ではなく在宅療養を強く希望したそうです。

病院のスタッフたちは、在宅医療に強く反対をしたそうです。
退院時には、こう言われたそうです。

「在宅なら、1週間もたないかもしれない。
 怖いと思ったら、今夜にでも戻ってきなさい」と。

ところが、怖いことは何も起こらず、1週間どころか1年近く在宅で生活しました。
何度か家族旅行にも出かけ、天気のいい日にはよく外出もして楽しまれていました。

まだ20代の女性ですので、スピリチュアルペインも大きく本当に辛い日々だった
でしょうが、在宅効果でしょうか、身体的痛みとは無縁で笑顔で過ごされていました。

というわけで、在宅医療という選択は、大学病院にはまだほとんで理解されていない
ことを肌で感じる毎日です。

11月28日には神戸で近畿在宅医療推進フォーラムといいう大きなイベントをします。
私はその責任者なのですが、先週は、近畿2府4県の代表者が集まり実行委員会でした。