《1932》 患者を「返す」、「返さない」とは [未分類]

医者はよく「患者を返す」という言い方をします。
私も時々しまった!と思いながら使っていますが。

患者さんはモノではなく人間。
「返す」という言葉はかなり上から目線だと思います。

そして「返さない」という言い方も上から目線です。
でも正しくは、なんて言ったらいいのでしょうか?

「返す」=患者が望めば家に帰らせるのは考えてみれば当然のこと。
しかし当たり前のことが当たり前ではないのが、現代のがん医療界。

「患者をキャッチボールする」という言葉も学会等でよく聞かれます。
おいおい、患者さんはボールではないのに、と言いたくもなります。

病院の「外出許可」や「外泊許可」にある「許可」にも同様に疑問を感じます。
どうして自分の家に帰るのにいちいち許可がいるのだろうか、などと思います。

「許可を得る」という発想自体が、上から目線に思えてなりません。
しかしこれは、なにか事故があった時のための処置なので仕方がないかも。

というのも何かあれば家族から訴えられるかもしれないので管理せざるを得ない。
家族のために上から目線にならざるを得ない、のが医者側の言い分なのだろうか。

それにしても、がん拠点病院の末期がん患者さんのキープ率はすごく高い。
外出、外泊、外出を3回やったところで終わりになるか、ホスピス紹介。

結局、「家に帰りたい」という患者の願いはかなわないまま、話が進む。
本人ももう自分がどうなっているのか分からなったままレールに乗る。

自分もかつて(20~30年前)は本当にひどいことばかりやっていた。
その反省、その謝罪の気持ちから、このような下手な日記を書いています。

昨日も、余命数日とみられる末期がん患者さんががん拠点病院から紹介。
初回の訪問をしましたが、激しい痛みで、まさに転げ回っていました。

「入院前よりずっと悪くなった」と家族は嘆き愚痴を聞かされます。
黙って聞きながら、看護師と一刻も早く緩和ケアの準備に入ります。

せめて、あと1ケ月でも早く紹介してくれたらなあ。
でもあと数日やったら、やってあげたいことの1割もできないやんか・・・

ふと見ると、食卓の上に近藤誠先生の著書が置かれていたので、
思わず、「それ、それ!」と叫んでしまいました。(笑)

  • 抗がん剤のやめどき
  • 病院からの退院どき

は現実には難しいもんやなあ、と感じています。

だから、できるだけわかりやすくて、絶対に後悔しないがん治療の本を
シコシコと書いたのですが、発売たった5日で重版になりました。

それどころか台湾、韓国、中国から早くも翻訳本のオファーが来ました。
私の本のアジア版は、この本でおそらく6冊目くらいになります。

熱中症が相変わらず多い。
めまい症、胃腸炎、ヘルペスも多い。

そして、「熱中症ノイローゼ」のような人もいます。

「私、熱中症でしょ?」
「いや、ちゃんと歩けるし、話せるので違いますよ」
「いやいや、テレビでやっている熱中症に違いないですよ、先生!」
と言い張って、必要も無い点滴を要求する患者さんも増えています。

クーラーを効かせすぎたクーラー病も増えています。
温度調節にとても気を使う季節ですが、無事にお過ごしください。

参考文献) 「長尾先生、近藤誠理論のどこが間違っているのですか?」(ブックマン社)