《1948》 家に帰れるのは死ぬ数日前 [未分類]

がん拠点病院から家に帰って来られた患者さんが
たった数日で亡くなることが、3人続いています。

帰宅した時には状態が悪すぎて、お話をする間もなく
すぐに旅立たれるのが、がん拠点病院の医師からの在宅依頼。

もちろん帰る直前まで、抗がん剤や高カロリー輸液や輸血など
ありとあらゆる濃厚治療を受けられています。

それでいて緩和医療は、充分ではない。
本来、緩和ケアが先だと思うのですが、現実はそうではない。

こねてこねてこねくり回してから、死ぬ直前に家に返す。
それも本人や家族が要望してはじめて帰宅がかなうのです。

本人や家族がそれで満足ならば、それでいいのですが、
「まさかこんなに早いとは思わなかった」と言われると辛い。

病院は死を想定していないが、現実には死はすぐそこに迫っていた。
がん拠点病院の主治医がどう考えているのか、知る由もありません。

一方、台湾では、「あと数時間」と病院の医者が言ったとたんに慌てて
家に連れて帰り、地域の長老が看取る文化があるそうです。

「病院で死ぬと魂が家に残るから」が病院で死なせない理由。
しかしそんな台湾でも、一昨年に在宅死と病院死が逆転した。

がんの治療の〝やめどき〟は、本当に難しいと思いますが、
〝やめどき〟が必ずある、と思っていたら自己決定できるはず。

もうひとつの理由は、在宅医療をまったく信じていないのです。
それががん拠点病院の本音なのでしょうが、反論できない事情があります。
(続く)

参考文献) 「長尾先生、近藤誠理論のどこが間違っているのですか?」(ブックマン社)