《0296》 アルコール依存症の治療(その3) [未分類]

アルコールもタバコも、「依存症」からの脱出は結構大変です。
本人の意志だけでは、極めて困難。
しかしやめようという意志がないとやめることができません。

そこで、依存症から脱却するための「お薬」を使います。
ニコチン依存症の場合は、チャンピックス錠。
アルコール依存症の場合は、シアナマイド液。

シアナマイド液は、アルコールの分解の邪魔をして
悪酔いの原因であるアセトアルデヒドを蓄積させます。
このお薬を飲んでからアルコールを飲むと、悪酔いします。

私は、家で10㎖飲んでもらい、クリニックに来られたら、
強力ミノファーゲンCの注射をする前に、また10飲んでもらう。
看護師さんの前で、まるで禁酒宣言するかのように飲んでもらいます。

シアナマイド液を2本処方し、1本は家に持って帰ってもらい、
1本はクリニックに「ボトルキープ」してもらいます。
このような作業を、1カ月程度、毎日のように続けてもらいます。

軌道に乗れば、ノックビンという粉薬に切り替えます。
0.1ないし0.2㎎を、朝、自分で飲んでもらいます。
ここまで来たら、禁酒成功の可能性がかなり膨らみます。

シアナマイドやノックビンといった「抗酒薬」には、副作用もあります。
両者とも、肝臓に負担がかかる場合があります。
ただでさえ負担がかかっている肝臓ですので、細心の注意が必要です。

シアナマイドの方が効果が少し強く、皮膚炎などの副作用もあります。
それより少しマイルドなノックビンは、3カ月~1年間くらい、飲みます。
最大の問題は、薬を飲んでくれるか、通院を続けてくれるか、です。

禁酒に伴うイライラや不眠にはやや強めの安定剤と眠剤を用います。
明日まで少し眠気が残るくらい強い睡眠薬の方がこの場合は適しています。
何でも「軽め」がいい時代ですが、この場合は「ジットリ系」の薬がいいようです。

いずれにせよ、本人の意志と主治医の熱意、そして信頼関係というものが
大きな柱になります。
医師と患者の「信頼関係」が揃ってこそ、治療に成功するのです。