《0096》 リビングニーズをどう使う [未分類]

末期がんの方の在宅主治医になったら、恐る恐る最初に訊くことがあります。
「どこかの生命保険に入っておられますか?それは死亡保険ですか?」
怪しい医者ですね。(笑)

生命保険会社や保険の種類にもよりますが、死亡保険に「リビングニーズ」
という特約があるのをご存じでしょうか?
「余命6カ月」と診断されたら、死亡保険金を先にもらえる特約です。

本当?と思われるかもしれませんが、担当者に確かめてみてください。
死亡保険が、本人のためなのか、残された人のためのものなのか?
詳しいことは分かりませんが、生きているうちにもらえたら助かるでしょう。

私だったら、そのお金でやりたいことをしてやる。
とりあえず世界旅行かな。
美味しいものは、沢山食べられないだろうから……
免疫療法や温熱療法などの代替医療法、健康食品に使いたい。
あるいは目先の医療費や生活費に使いたいなど、実際の患者さんの
ニーズは様々です。

手続きは、医師に診断書1枚書いてもらうだけです。
病院の主治医でも在宅主治医でも、どちらでもOK。

診断書には、「余命6カ月」と診断する根拠を書きます。
がんが、あちこちに転移して増殖していること。
画像や腫瘍マーカーなどでそれが分かること。
そして、医師が「余命6カ月」と診断することです。

医者が「末期」という言葉を使う場合の余命とは、通常3カ月でしょうか。
一方、在宅ホスピスケアの平均在宅期間は、1カ月半です。
さらに、歩けなくなるのは亡くなる数日前。
時に、亡くなる当日です。

こんな、末期がんの余命6カ月宣告で受け取れるリビングニーズ特約。
「余命なんてええ加減なもの、外れて怒られるのは私だからねー」
など、患者さんご本人とお話しすることもあります。

「生命保険にまで、気を配るのが在宅医の責務である」とは、尊敬する
在宅医、仙台往診クリニックの川島孝一郎先生のお言葉です。
知っていて損はないと思います。