《0999》 抗がん剤と野球の打率 [未分類]

さて、そもそも家族がイメージする抗がん剤とは何か?
おそらくがんを治す「薬」、というイメージなのでしょう。
医者の間では、「毒」というイメージの方が強いのですが。

患者さんは、病気を治すお薬だと思っています。
あるいは、睡眠薬のように飲めば眠れるお薬だと。
しかし、医者は毒をもって毒を制するとイメージします。

そもそも、抗がん剤は2割の患者さんに効果があれば認可されます。
たった2割?
そう、たった、2割です。2割に効果があれば、抗がん剤なのです。

実は、抗がん剤は、野球の打率と同じです。
2割バッターであれば、試合に出られます。
3割バッターであれば、一流選手です。

肉眼的にがんが消えれば「著効」といわれ、
半分以下に縮小すれば、「有効」と言われます。
「著効」と「有効」を合わせて、「奏功」といいます。

「奏功率」が2割以上であれば、抗がん剤となるのです。
裏を返せば、8割に効果が無くてもまったく構わないのです。
宝くじや競馬のお話も、思い出して下さいね。

半分以下とは、体積が半部以下になることです。
画像診断上、直径3cmが2cmになれば、体積は半分以下です。
それをもって、「有効」となるのです。

日本の人口は、世界人口の1.9%です。
その日本で、世界の抗がん剤の25%が使われています。
日本人は、世界一、抗がん剤が好きな民族とも言えます。

冒頭、私に激怒したご家族は当然そんなことを知りません。
抗がん剤は、がんを治すお薬であると、信じ切っています。
野球の打率の話をしたかったのですが、結局できませんでした。

がん患者さんの多くは、最期まで、抗がん剤に頼ります。
頼るのは勝手ですが、間違ったイメージで頼っています。
少しでも、抗がん剤のことを知って頂きたいと思います。

PS)
年が明けて、たった10日間しか経っていません。
しかしもう4人の旅立ちがありました。
3日に1人の割合で、平穏死を見守る日々です。

また忙しくなっていました。
あっちへ行ったり、こっちへ行ったり
落ち着きのない多動症の町医者です。

抗がん剤については、日々のエピソードも交えて
毎朝、リアルタイムで書いています。
どうぞよろしくお願いします。